ブログ:人は理由を捏造する

このブログも最近は、
新型コロナウイルスの話ばかりで
少々疲れてきたので、
今回は、気分転換の意味を含め、
少々趣を異にしたブログを書くことにしました。

私たちは、毎日の日常生活の中で、
歯磨きや出勤といった習慣的な行動から、
仕事、休息、食事、付き合い、外出などの
自発的な行動まで様々なことをしています。

ただし、これらの行動のうち、
はっきりとした根拠もなく、
ただ何となくといった気持ちで
行動していることも多々あります。

「なぜ、今日の夕食はカレーにしたのか」
「なぜ、その本を買ったのか」
「なぜ、夕方散歩に出かけたのか」

こんな質問をされたら、
「カレーが美味しそうだったから」
「仕事になんか役立つかなって思ったから」
「少しは運動をしなくてはと思って」
といった理由を語ると思います。

しかし、多くの場合、
最初からそう思って、
その行動を取ったわけではなく、
実際には、その行動を取ってしまったあとに、
つじつまの合う理由を
でっちあげていることが
しばしばあるというのが現実なのです。

この事実は、
てんかんなどの病気の治療のために
脳梁(のうりょ)という、
右脳と左脳をつなげている神経の束を
切断する手術をうけた患者さんによる研究から
うかがい知ることができます。

言葉を司る「言語野」は通常左脳にあります。
右脳と左脳からの神経は途中で左右交差して、
身体の反対側を支配しています。

ですから、
視野の右半分にあるものの情報は左脳に、
視野の左半分にあるものの情報は右脳に
入ってきます。

脳梁を切断した患者さんに、
右の視野に「笑え」という文字を見せると、
その情報は言語野のある左脳に直接届きます。

ですから患者さんは、
そこに書いてある文字を理解して笑いますし、
「何て書いてありますか?」とたずねたら、
「笑えと書いていました」と答えます。

では、左視野に「笑え」という文字を提示したら
どうなるでしょうか。

「笑え」という文字を左視野で見た場合、
その情報は右脳に届きますが、
そこには言語を司る神経野が存在せず、
また脳梁が切断されているため、
言語野がある右脳との
情報のやり取りができないため、
言語としての文字が理解できません。

当然、何の反応もないと思いきや、
実際には、患者さんは笑うのです。

ところが、「何て書いてありましたか」とたずねると
「何も見えません」とか
「何か見えたけど、よくわかりません」
などと答えるのです。

これはとても不思議な現象です。
文字は理解していないのに、
笑うという行動ができるのです。

このような事実から、
言語野がない右脳も、
何かしらの方法で、ある程度は言語の内容を
把握しているということがわかります。

さらに面白いことに、
「なぜ笑ったんですか」とたずねると
「あなたが、面白いことを言うから」とか
「今の雰囲気が面白かったから」といったように
もっともらしい理由を作り出します。
つまり「作話」をするのです。

本人からしてみれば、
笑ったという事実は否定できません。
しかし画面に「笑え」と出ていたという
本当の理由は認識できないため、
何とか現状とのつじつま合わせをしようと
無意識レベルにおいて、
理由をこじつけるという作業を
せざるを得ないのです。

もちろん本人は
理由をでっちあげたなどという認識は
ありません。

ただ、質問されて咄嗟に答えたら
もっともらしい理由を言っていたというのが
実際のところではないでしょうか。

このように人は、
自分のしてしまった行動に対して、
それを「なぜ?」と改めて聞かれると、
無意識に、もっともらしい理由を
でっちあげることがしばしばあるのです。

実は、私には思い当たる体験があります。

あるとき、東京で昼に映画を見て、
その中でカレーを食べているシーンがあり、
それを見て美味しそうだなと思ったのですが、
映画を見終わった後は、
そのことはすっかり忘れていました。

しかしその晩、なぜかカレーが食べたくなり、
CoCo一番屋に行ってカレーを食べたのです。

もしこの時に、
「なぜカレーを食べたの?」と質問されたら、
「CoCo一番屋の看板が目に入ったから」
「カレーの美味しそうな匂いがしたから」
などと、たぶん理由を捏造していたかもしれません。

私の場合、食べている最中に、
ふと、映画のシーンを思い出したので、
なぜ自分がカレーを食べたいと思ったのか、
本当の理由がわかったのですが、
思い出さなければ、
適当な理由をこじつけていたと思います。

このように、本当の理由には気付かず、
何とはなしに行動していることが
日常では普通にあります。

だからこそ、もし理由をたずねられると、
つじつま合わせの理由をもっともらしく
言うことになってしまうのです。

人はこのように、
自分のとった行動に対する理由を
知らず知らずのうちに捏造しているのです。

皆さんはそんな経験、ありませんか。

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