私たちは自分の意志で
物事を判断したり行動したりしていると
思っているかもしれませんが、
実は、日常過ごしている時間の多くは、
自分の意志を働かすことなく
無意識に行われています。

例えば、朝起きてトイレに行き、
洗面するといった習慣的な行動や
直感や衝動のように
自動的に出てくる思いは
意志の働きによるものではなく
「無意識の力」のよるところが大きいのです。

ここで言う無意識とは、
精神分析でいうところの無意識ではなく、
意識することなく
知らず知らずのうちにとか、
ついやってしまっているような行動の
背景にある力のことです。

一方で、自分の意志で考え、判断し、
行動するという「意志の働き」も当然あります。

この「無意識の力」と「意志の働き」は
ダニエル・カーネマン著の
「ファスト&スロー」(早川書房)では
それぞれシステム1、システム2として
詳しく書かれています。

システム1(速い思考、無意識の力)とは
直観的で自動的な思考であり、
システム2(遅い思考、意志の働き)とは
注意力や集中力を要する思考のことで、
これらが絶えず相互作用をしながら
日常におけるものごとを判断したり
行動したりしています。

システム1は
道端で嫌いな人と会うと
目を伏せて避けようとしたり、
凶悪犯罪のニュースを見て、
「ひどいことをするなあ」と感じたり、
スーパーの入口に貼ってある
「安売りセール実施中!」という文章の意味を
理解したりするといったときに働いています。

システム1は、努力もいらず
あまり考えることなく、
自動的にわき上がってくる思いや感情であり、
瞬時に判断や行動に結びつきます。
これが「無意識の力」です。

一方、システム2は、
パーティー会場で人を捜したり、
どの車を購入するかを考えたり、
お菓子を食べるのを我慢したり、
「人の幸せって何ですか?」という
質問に答えようとする場合に働く思考です。

システム2は、
注意力や集中力を必要とするため
時間が経つと消耗し、
あまり働かなくなってきます。
これはいわゆる「意志の働き」です。

システム1とシステム2は、
相互につながりを持っており、
システム1が印象、直感、衝動などを生みだし、
その情報を絶えずシステム2に供給しています。

システム2がOKすれば、
印象や直観は確信に、衝動は意志に変わります。
つまり、システム2の考えや行動の大半は
システム1から発しているということです。

例えば「ホリスティックコミュニケーション」
と聞くと、最初はよくわからなくても、
何度も話を聞いているうちに、
「こんなことなんだろうな」と
勝手に理解して受けれてしまいます。

これはシステム1がしている作業です。
人は同じことを何度も繰り返されると
抵抗がなくなり、
自分が知っているかのような
気になってしまうのです。

ところがあるとき、
「ホリスティックコミュニケーションって何?」
とたずねられると、
その時に初めてシステム2が働き始め、
システム1が集めた情報をもとに考えはじめ
自分なりのことばで表現しようとします。

私たちの頭の中では
常にそのような情報のやり取りが
繰り返されています。

このように、人は自分の「意志」により
物事を考えたり行動したりしていると
思われているのですが、
実際には、無意識に蓄ええられた
情報によるところが大きく、
その意味ではわれわれの「意志」は
「無意識」に操作されていると言えるのです。