ブログ:長尾和宏先生の講演を聴いて①

さる9月22日に彦根文化プラザで
長尾和宏先生の講演会があり、
私はその座長をさせてもらいました。

これは世界ホスピス緩和ケアデーの
取り組みのひとつで、
滋賀県では毎年、がん拠点病院の持ち回りで、
記念県民公開講座を開催しています。

昨年、私が担当となり、
長尾先生の講演会を企画したのですが、
台風で中止となってしまったため、
今回、再度お願いしたという経緯があります。

今年もまた、講演の数日前に台風が発生し、
どうなることやと心配しましたが、
無事、開催できてホッとしました。

今回の講演は
「緩和ケアと尊厳死を考える」
~人間らしく、自分らしく最期を迎えるために~
でした。

長尾先生は、
テレビや雑誌にもよく登場される
とても有名な先生で、
著書もすでに60冊を越え、
来年の夏には、
著書「痛くない死に方」が原作の映画も
公開されることが決定しています。

長尾先生とは、遡ること十数年前、
私が緩和ケアに関する講演をしたときに
聴きに来て下さり、
その懇親会で声をかけて頂いたのが
初めての出会いでした。

その際、先生の初めての著書
「町医者冥利」という本を下さりました。
もらった本は、あまり読むことはないのですが、
なぜかこの本はすぐに読んでしまいました。

内容は忘れてしまいましたが、
この先生はすごく人間的で、
一生懸命で患者さん思いのいい先生だなと
思ったのを今でも記憶しています。

その長尾先生が、
こんなに有名になるなんて、
当時は思いもしませんでした。

講演は映像あり、写真あり、
そして長尾先生の歌まであるという
とてもユニークで楽しくわかりやすく、
かつ、内容の濃いものでした。

いくつか印象に残った話があったので
それについて書かせてもらいます。

先ずは、終末期の患者さんは、
「脱水への旅」をしているのであり、
むやみに点滴をして
それを邪魔してはいけないという話には、
結構インパクトがありました。

終末期の患者さんに
点滴はしない方がいいというのは、
緩和ケアでは当たり前のことですが、
一般病棟では、最後の最後まで
点滴をしていることがほとんどです。

私が医者になった頃などは、
末期の患者さんは、食事が食べらくなると、
高カロリー輸液をしていました。

そうすると最後はみんな
顔や体がパンパンに腫れて亡くなります。
当時は、このような光景が当たり前でした。
長尾先生はこれを「溺れ死ぬ」と
表現していました。
まさにそんな感じです。

一方、点滴をせずに自然のままでいると、
次第に脱水状態になり、
最後は枯れていくように亡くなります。

この場合は、あまり苦痛がありません。
なぜかというと、脱水になることで
天然の麻酔がかかるので、
朦朧となって次第に意識が下がってくるため
あまり苦痛を感じずに亡くなれるのです。

本来はこのような亡くなり方が自然であり、
苦痛も少ないのですが、
なかなか本人や家族の理解が得られません。

食事も食べられないのに
点滴もしてもらえないのかと
不満を訴えてくる家族も少なくありません。

そのため、十分な説明をしても
点滴をしてほしいという希望が強い場合は、
最小限することで、
本人や家族の思いに添うことにしています。

また、薬のやめどきの話も共感できました。
病気になれば、
何かしらの薬を飲むのは当たり前ですが、
中でも、血圧の薬やコレステロールの薬、
骨粗鬆症の薬などを長年飲んでいる患者さんは
かなりいます。

しかし末期患者さんにこれらの薬は不要です。
それどころか有害ですらあります。
ところが、長年飲んでいた薬は、
飲まなくてはいけないという思い込みのせいか、
なかなかやめることができないのです。

もっとも医者が薬を
出し続けるのも問題なのですが、
先ずは、末期になったら
それらの薬は飲む必要がないということを、
患者さんがしっかりと
認識しておく必要があります。

そうしないと、
血圧が低くなっているのに抗圧剤を飲み、
低血圧になってしまうとか、
寝たきりなのに骨粗鬆症の薬を飲み、
薬の量が多いため、
食事が食べられないといったような
本末転倒の事態に陥りかねません。

他にもいくつか印象的な話がありましたが、
それは次回のブログで紹介させて頂きます。

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