ロバート・B・チャルディーニ著の
「影響力の武器」(誠信書房)は
とても有名な本で、
世界で300万部以上売れています。

その後、これに関連して
「影響力の武器実践編」
「影響力の武器戦略編」が出版され、
さらに最近では、
「プリスエージョン
~影響力と説得のための革命的瞬間」
という本も出版されました。

これらはすべて、
人が知らず知らずのうちに影響をうけてしまう
その仕組みやカラクリについて、
多くの研究論文をもとに、
まとめられた本であり、
コミュニケーションや心理療法にも
とても役立っています。

「影響力の武器」で紹介されている、
人に影響を与える要因は6つあります。
それが「返報性」「一貫性」「社会的証明」
「好意」「権威」「希少性」です。

今回は、このうちの「返報性」について
自分の体験も含め書きたいと思います。

「返報性」とは、
人は誰かに何かをしてもらうと
それに対して恩義を感じ、
ついお返しをしたくなるという心理です。

最も有名な返報性の実例は、
試食コーナーで試食すると、
そのうちの何割かは、
その商品を買ってしまうという現実です。

本来であれば、
試食コーナーの商品を買う必要は
全くありませんが、
無料で飲食し、しかもそれが
美味しかったりすると、
つい、買ってあげないと
申し訳ないという心理が働くのです。

医療の世界でも、
MR(薬の宣伝等をする製薬会社の職員)が、
医者に対して接する場合、
よくこの手を使います。

例えば社内勉強会と称して、
会社で簡単な講演会を依頼されます。
その際、当然それなりの報酬をくれます。

その後MRが再び来て、
新薬を病院で採用してもらえないかと
依頼に来ます。

講演会ではお金ももらっているので、
ここで依頼を断るのは
申し訳ないという心理が働き、
まあ、採用してもいいかという気持ちになり、
結果、採用することになります。

もっとも、なかなか新薬を採用しない私は、
何度もこの手で講演や座長を依頼されましたが、
基本はお断りしています。

やむを得ず受けた場合も、
だからと言って、必要だとは思わない新薬を
採用することもありません。
ですから、MRも私には
ほとほと困っていると思います。

しかし返報性の原理を知っていながら、
つい恩義を感じてしまい、
商品を買ってしまうこともあります。

以前、滋賀にある金剛輪寺に
ぷらっと行ったことがありました。
冬場でもあり人はほとんどいませんでした。

本堂を覗くと誰もいなかったので、
何とはなしに入って仏像を見ていると、
先程まで庭の掃除をしていた女性が、
ツカツカと入ってきて、
「よかったら説明しましょうか」と
声かけをされました。

時間もあったし、断る理由もないので、
説明をお願いしたところ、
20分ほど丁寧に説明してくれました。

説明が終わると、
「こちらからは仏像の後ろ側も見えますので、
どうぞゆっくりと見ていって下さい」と言って、
私の元を離れていきました。

私は順路の指し示す通りに本堂の中を一周し、
さあ、帰ろうと思って出口に向かうと、
出口の横に本やお守りなどのグッズが
並べられたコーナーが設置されており、
そこには先ほど説明してくれた女性が
ちゃっかり座っているではないですか。

そのまま「ありがとうございました」と言って、
立ち去ることもできましたが、
仕事だとは言え、
あんなに一生懸命説明してくれたのだから、
何かひとつくらい買ってあげないと
申し訳ないなと思い、
千円の曼荼羅の色紙を買ってしまいました。

頭の中では、これが返報性の原理だよなと
わかっていながらも、
まあ、いいかと思って買ってしまったのです。

返報性の原理、恐ろしや!です。