ブログ:患者さん側の問題①

先週は、私が医者嫌いである理由を、
医者の視点から書きました。
今週は二回にわたり、
「患者さん側の問題」について
書きたいと思います。

医者が自己治癒力を軽視し、
検査による原因探しや、
投薬による治療ばかりに
目が向いてしまうことが、
私が医者嫌いな理由だと言いましたが、
実は、そのような状況を助長しているのが
患者さんの思いや行動なのです。

特に、患者さん自身が
人は自己治癒力を持っているという認識が
あまりにも欠けているということが
大きな原因のひとつです。

この点については、全ての責任を
患者さんに帰するつもりはありませんが、
しかし最低限の認識は持っておいて
もらいたいと思っています。

最も典型的な例として、
ちょっと風邪の引きかけかなと思ったので、
ひどくならないうちに診てもらおうと来ました、
というパターンがあります。

この患者さんの場合、
風邪は薬で治すものであり、
自己治癒力が治すものだという認識は
全くないように思われます。

さすがに一般的な医者でも、その程度なら
自然と治りますと言いたいところでしょう。
しかし、薬をくれと言わんばかりに
病院やクリニックに来られたならば、
できるだけ不要な薬は
出さないようにしようという認識を
持っている医者以外は、
とりあえず症状に合わせた薬を
処方しておきましょうということになります。

これは風邪に対する
抗菌剤(抗生剤)の処方も同じです。
風邪に抗菌剤は無効というのは
医者であれば誰でも知っています。

一昔前までは、予防的に抗菌剤を処方することが
開業医では当たり前のようにされていました。

しかし抗菌剤の乱用による耐性菌問題、
つまり抗菌剤を使えば使うほど、
薬が効かなくなる細菌が増えてくるという事実が
社会問題になってからは
国や学会もこの問題を
真剣に考えるようになりました。

そのため今では、風邪や気管支炎には
抗菌剤は使わないようにしましょうという
各学会のガイドライン(指針)も
出されるようになりました。               

それにもかかわらず、
細菌とウイルスの違いがわからない患者さんが、
風邪のウイルスにも抗菌剤が有効だと
思っているのか、
医者に抗菌剤の処方を希望したりします。

風邪には抗菌剤は無効どころか
かえって有害だと言って、
きちんと断るのが医者の仕事なのですが、
その誤解を解くこともなく、
抗菌剤を処方してしまう医者も
実際には少なくありません。

患者さんの思いを大切にする医者だと言えば、
聞こえがいいですが、
有害なことだとわかっていながら、
患者さんの言いなりに処方するのは
私は無責任な医者だと思います。

ここで言いたかったことは、
少なからず患者さんの認識不足が
医者に不要な薬を投与させてしまうことを
助長しているという側面も
あるということです。

続きは次回に。

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