ブログ:問題が解決するための要因

前回紹介した
オープンダイアローグのセミナーの前半は、
心理療法でクライエントがよくなるための要因に
ついての講義でした。

この話はとても興味深く聴かせてもらいました。
と言うのも以前、仲間と一緒に訳した
「心理療法・その基礎なるもの」という本の内容と
今回の講義はかなり関連していたからです。

この本は、問題が解決し、
クライエントがよくなるのは、どのような要因が
関与しているのかということについて
述べられたものでした。

そこではランバートが行った研究について
触れられており、
それによると人がよくなるのは、
1,クライエント要因(40%)
2,治療関係要因(30%)
3,期待感や希望(15%)
4,技法要因(15%)
の四つだと言うのです。

これが意味するところは衝撃的でした。
なぜならば、今までは
認知行動療法や精神分析療法、
ブリーフセラピーといった、
技法(療法)がクライエントを癒し
問題を解決していたと思っていたのですが、
それによってよくなったと考えられるのは
実は全体のたった15%だというのです。

つまり、どんな療法であれ、
85%の部分は治療以外の部分で
よくなっているということです。

さらに言うならば、クライエント要因、
つまりクライエントが持っている
能力や才能、経験、人間関係、
家庭環境、生活環境といった、
治療とは直接関係ない要因によって
よくなると考えられる部分が40%と
最も影響力が大きいという結果でした。

心理療法のテクニックで
患者さんを治すということにとても興味を持ち、
その視点から日々治療に当たっていた私には、
このデータは本当に衝撃的でした。

ところが、今回の講義で聴いた話は
もっと衝撃的でした。

先のランバートが示したデータは、
実は根拠が曖昧だとの指摘が多くなされたため、
新たに調査し直した結果をまとめたものを
紹介してくれました。

それを見ると、
40%だったクライエント要因が、
何と86%になっているではないですか!

それ以外の様々な要因は
残りの14%に含まれてしまうというのです。

先のデータの分類と多少異なりますが、
その内訳を見てみると
信頼関係要因が36~50%
セラピスト要因が36~57%
フィードバック要因が21~42%
技法そのものの要因は7%
技法を使って説明することの要因が28~?%
となっていました。
(On Bicoming a Better Therapist:
Evidence-Based Practise One Client at a Time
2014.Barry Duncan 2nd Editon)

これらは全て独立した要因ではないため
お互いが重なっている部分はありますが、
それにしても技法そのものによる効果が
たったの7%というのには驚きます。

これは全体の14%の中の
7%という意味ですから、
全体からすると
たったの1%ということになります。

いかに技法そのものの効果は
ほとんど関係ないかということがよくわかります。

重要なのは、技法そのものではなく、
それを使うセラピストの雰囲気や態度、自信、
説明やフィードバックの仕方、
そして、そんなセラピストとの
やりとりで築かれた信頼関係といった要因の方が、
圧倒的にクライエントの改善に
影響するということです。

そうは言っても、その影響も
全体からすると13%程度です。
いかにクライエント自身が持っている力が
大きいのかがよくわかります。

よく、病気にせよ悩みにせよ
それのを治したり解決したりするのは
自分自身だと言いますが、
まさにそのことを
如実に表したデータだと思いました。

皆さんはこのデータを見て
どう思われましたか。

    ブログ:問題が解決するための要因” に対して1件のコメントがあります。

    1. 金丸 より:

      先生、いつもありがとうございます。

      クライエントがよくなった要因、86%本人要因で自分で治す、自ら治る。
      他の要因14%、キッカケにはなっている。

      クライエントは再生する力を持っている、潜在能力がある、それを信じる、周りからのキッカケ作りに自ら気づく。見えるもの、見えないものから、気づき、本人が小さい一歩を動き始めることが大切なのではと考えさせられました。

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