ブログ:茂木健一郎さんの講演を聴いて
去る9月24日に行われた
30周年記念シンポジウムin京都での
茂木健一郎さんの講演について
少々感想を述べたいと思います。
当日のテーマは
「脳の使い方で、こんなにも人生が変わる」
でしたが、実際の講演内容は全く異なり、
個性の大切さや個性を重視した価値観の重要性
といった話しをしてくれました。
茂木さんの話をひと言で言うと、
一般化や標準化といったような
何事も画一的に考える視点は
研究者には必要不可欠な見方ですが、
現実の世界では
それぞれの個性を重んじる価値観が
大切になってくるのではないかというものでした。
内容は一見堅そうですが、
しかし実際の話しはとても面白く、
会場を終始笑いの渦に巻き込んでいました。
例えば、河合隼雄先生が患者さんに
箱庭療法(砂を敷き詰めた箱に
人形や小物を置く作業をする療法)を
していたら、その患者さんがいきなり
その箱ごとすべてを窓の外に
投げ捨ててしまったことがあったそうで、
でも、それでその患者さんは
よくなってしまったと言うのです。
また無農薬リンゴの栽培に成功した木村秋則さんに
NHKがインタビューをした際、
木村さんがUFOに乗った話しや
松の木に龍が乗っていたという話しは
すべてカットされ放映されなかったとか、
そんな話しを結構面白おかしくしてくれるので、
みんな爆笑の連続でした。
もっとも茂木さんは、
このように人の個性の部分を切り捨て、
ありのままのその人ではなく
都合のよい部分だけを切り取って放映するため
テレビは嫌いだし、見ないと言っていました。
確かに、テレビもニュースも新聞も
各社の都合のよいように報道しているため
かなり操作されている部分があるのは事実です。
そうだとわかっていても、
つい洗脳されてしまうのが人間ではありますが。
このように一つの部分だけを切り取って
この人はこういう人だ、
この事件の真相はこうだと
レッテル貼りをしてしまうと、
それ以外の部分が全く見えなくなってしまうため、
さまざまな問題や誤解を生じることになります。
またホリエモン(堀江貴文)のことにも
触れていましたが、これもまた面白く、
かつ奥が深い話しでした。
ホリエモンが刑務所に入っているとき
茂木さんが面会に行ったそうですが、
そのときに彼は
「今週は一人半分ずつバナナがつくんだよ!」
と言ってとても喜んでいたそうです。
それまで六本木ヒルズで
なに不自由ない生活をしていた彼が、
半分のバナナが出されたことに
大きな幸せを感じていたことに
茂木さんは衝撃を受けたと言っていました。
この話は、あのホリエモンが
半分のバナナに喜んでいたという意味では
面白い話しではありますが、
その一方で、どこに価値観や喜びを見出すかは
人それぞれ違うし、
また同じ人であったとしても、
状況や立場によって焦点を当てるところが異なり、
その結果、今までは
うれしくも楽しくもなかったことが
この上ない喜びや幸せに
感じることもできるようになるということを
言いたかったのではないかと思いました。
そのような意味で、
現代の科学や医療の常識は
患者さんの個性の部分は切り捨て
多くの人に役立つ、多くの人に効くという
商品や治療法ばかりに目が向けられるため、
平板で画一化した価値観がもてはやされ
個性が尊重されない価値観の危うさに
警鐘を鳴らしていたのではないかと、
講演を聴きながら考えていました。
実際の講演を聴いた皆さん、
いかがだったでしょうか。
茂木先生の講演、ステージの前方に出てこられて、両手を振りながら自由に伸び伸びと話された内容に魅了されました。「僕はテレビを一秒も見ません」と言われ、テレビはその人の一部分を切り取り、その人の全体(個性)はわからないと知りました。私たちは、人の一部分を見てわかったようなつもりや決めつけをしてしまいます。また、先生は神秘的な体験をされた方々の話をされました。極限状況の体験もその人の個性で、貴重なものです。
エビデンスを非常に求められる時代に、エビデンスのないものも人には扱われることがあります。人間は不思議で未知の可能性があるのかもと、普段考えないようなことも考えるキッカケとなりました。素晴らしい先生でした。本当にありがとうございました。