皆さんは、本当の薬だと言われて、
プラシーボ(薬効のない錠剤)を飲むのと、
プラシーボだと言われて、
本当の薬を飲むのとでは、
どちらの方が効果が高いと思いますか。

実は、そんな研究が2014年の
Science Translational Medicineという
医学雑誌に掲載されていたので、
今回はそれを紹介したいと思います。

これは偏頭痛の患者さん66人が、
合計459回の偏頭痛発作を起こした際に
処方された薬の反応を分析したものです。

この研究が面白いのは、
各患者さんに偏頭痛発作が起きた際に
飲むようにと手渡された6つの薬の袋には、
何の薬が入っているのかが書かれたラベルが
貼られていたということです。
つまり、患者さんは何を飲むのかを
わかった上で薬を飲むことになります。

6つの薬袋のうち、
3つには実薬(マクサルトという
偏頭痛発作のときに飲む鎮痛剤)、
残り3つにはプラシーボが入っています。

さらに、各々3つの実薬とプラシーボに、
それぞれ「マクサルト」、「プラシーボ」、
「マクサルトまたはプラシーボ」と書かれた
三種類のラベルが貼られています。

つまり、6種類の袋の
中身とラベルの組み合わせは以下の通りです。
実薬+「マクサルト」
実薬+「マクサルトまたはプラシーボ」
実薬+「プラシーボ」※
プラシーボ+「マクサルト」※
プラシーボ+「マクサルトまたはプラシーボ」
プラシーボ+「プラシーボ」

実は、※印のついたものは
ラベルに書かれているものとは異なる中身が
入っていることになります。
(患者さんはそのことを知りません)

各々の患者さんが、
この6種類の袋を手渡され、
偏頭痛発作が出現したら、
何も飲まずに30分待ち、
その時の頭痛の程度を数字で記録します。

さらに6種類の中のどれか一つを内服し、
その2時間後の頭痛の程度を数字で記録します。

つまり偏頭痛が起こった30分後と、
2.5時間後の頭痛の程度を
記録してもらうというということです。

さて、結果はどうだったでしょうか。
全体的に実薬(マクサルト)の方が
プラシーボよりも鎮痛効果がありました。

この結果はあまり面白くありませんが、
もう少し詳細に分析してみると、
色々と面白いことがわかりました。

実は、この研究の第一段階として
偏頭痛が起きた際に、全く薬を飲まずに
30分後と2.5時間後の頭痛の程度も
数値化されており、
これは平均すると、30分後よりも
2.5時間後の方が15%程度
痛みが強くなったという結果でした。

ところがラベルを貼った薬を飲むと、
それが「プラシーボ」というラベルであろうが、
「マクサルト」というラベルであろうが、
多かれ少なかれ痛みは軽減していました。

つまり、ラベルや中身に関係なく、
薬を飲むという「行為」は、
何もしないという状況よりも、
明らかに痛みを軽減するということです。
ここでも、「行為」の重要性が
再認識されました。

また「プラシーボ」と書かれたラベルが
貼られた薬を飲むと
中身が実薬であろうが、プラシーボであろうが、
痛みの程度は軽減するものの、
程度の違いはほとんどありませんでした。

実際には実薬を飲んでも、
「プラシーボ」と書かれていると、
あまり効果が表れないということです。

さらに面白いことに、
「プラシーボ」と書かれた実薬と、
「マクサルト」と書かれたプラシーボを
飲んだ場合とでは、
鎮痛効果に有意な違いは
認めなかったということです。

これは、「マクサルト」と書かれたラベルを
見た際の期待感が
実薬の効果に勝るとも劣らず、
強いものがあるということを意味しています。

ここで言うラベリングによる期待感とは、
まさに無意識の力であり、
「心の治癒力」そのものです。

また「マクサルトまたはプラシーボ」
と書かれたラベルの薬を飲んだ場合、
中身が実薬であろうがプラシーボであろうが、
「マクサルト」と書かれた薬を
飲んだ場合の鎮痛効果と比べ、
有意な違いはありませんでした。

つまり、「マクサルトまたはプラシーボ」と
ラベルが貼られているだけで、
無意識レベルでは、もしかしたら
実薬かもしれないという期待感が働き、
それが「マクサルト」と書かれた薬と
同程度の鎮痛効果をもたらしたと
解釈することができます。

この研究を通して、
薬を飲むという「行為」によって
引きだされる無意識の力、
「ラベル」から受け取られる
ポジティブな期待感やネガティブな先入観、
そういったものが治療効果に
大きく反映されるということがわかり、
とても興味深かったです。

皆さんはこの結果をどのように思われますか?