今回は前回と少々違った視点から
医者の態度が治療に及ぼす影響について
書かせて頂きます。

先ずは麻酔科医のかかわり方が、
術後の回復などにどれくらい
影響を与えるのかという研究を
ご紹介させて頂きます。

一般的に、手術を受ける患者さんは
前日に麻酔科医の回診があり、
手術当日や術後は、どのようなことを
するのかといった説明を受けます。

この術前回診における麻酔科医の態度が、
術後にどのような影響を与えるのかについて、
50年以上前の1964年に
バーバード大学医学部の
ローレンス・エグバート医師等らによって
すでに発表されています。

どのような研究かというと、
先ず手術前の患者さんをランダムに
二つのブループに別けます。

一方のグループの患者さんには
陽気で楽観的な麻酔科医から、
とても簡単な手術だから、
痛みもなく何も心配する必要もないので
きっとうまくいくと説明されます。

もう一方のグループの患者さんには
無愛想で性急で思いやりのない麻酔科医から
形式的な説明を受けます。

実は麻酔科医は、帽子を変えただけで
同じ人物が説明していました。

その結果、楽観的な麻酔科医は
そうでない麻酔科医と比べて、
術後、患者さんが必要とした
鎮痛剤の使用量が半分ですみ、
なおかつ退院までの日数も、
平均2.6日早かったというのです。

この研究からわかることは、
直接的な治療をしなくても、
どのような態度で接するか、
どのように説明するかということだけでも、
患者さんの身体症状に
影響を及ぼしてしまうということです。

実を言うと、
医者の態度やかかわりいかんによっては、
逆に、症状や病気を悪化させてしまうことも
十分にあり得ます。

倫理上の問題もあり、
最近はなかなか研究しにくい面はありますが、
医者のネガティブな態度や
患者さんを落ち込ませるような説明は
逆に病気や症状を悪化させるというという研究も
少なからず存在します。

例えば、抗がん剤の臨床試験の際に、
これは抗がん剤ですので
脱毛の可能性があることを説明した上で
生理食塩水を点滴した場合、
30%の患者さんに脱毛が生じたという
研究があります。

また、こんな研究もあります。
34人の大学生を対象とし、
これから頭部に電流を流しますが、
副作用として頭痛が起こるかもしれないと
説明をしたうえで実験を行います。

すると、実際には電流を
全く流れていないにもかかわらず、
3分の2の被験者が頭痛を訴えたというのです。

このような研究から、
ネガティブな情報を与えるような説明は
症状の悪化を引き起こす可能性が
少なからずあることがわかっています。

このように医者の態度や説明いかんで
患者さんの症状は
予想以上によくなったり、逆に悪くなったり
してしまうのです。

要するに、医者の態度や説明の仕方は
薬に勝るとも劣らない「治療」に
なり得ると同時に、
症状を悪化させてしまう「毒」にも
なり得るということです。

だからこそ、
医者をはじめとする医療者は
その点を十分に認識した上で、
患者さんにはかかわる必要があると
私は思っています。