前回の続きです。
私は人が本来的にもっている自己治癒力を
医療の根本に据えるべきだと考えています。

だからと言って薬を使うなとか
手術は不要などと言うつもりは毛頭ありません。

事実私は30年以上患っていた慢性扁桃炎を
10年程前には手術をしましたし、
それまでは、痛みが強いときなどは
ステロイド剤や鎮痛剤も使っていました。

お陰様で、手術後はもう扁桃腺炎の苦痛に           
悩まされることはなくなりました。
その意味では西洋医学の恩恵も
十分に実感しているつもりです。

ですから病状によっては、
当然、薬や手術は必要だと思っています。
でも、そのことと、自己治癒力を軽視し、
安易に投薬や手術をすると
いうこととは別問題です。

西洋医学は機械論に基づく学問体系なので
自己治癒力といった概念はあまり重視されず、
どうしても、いかに原因を見つけられるのか、
どうしたら症状を抑え、
病気をやっつけられるかといったことが
中心テーマになり、
いかに自己治癒力を高めるかといったことは
ほとんど関心が持たれません。

そのため、検査は頻回に行われますし、
また、自己治癒力で治すという視点が
あまりないため、
病院に行けば必ずと言ってよいほど
薬が処方されます。

「心の治癒力」や「体の治癒力」が
治療の根底にあるという考えを
持っている私にとって、
自己治癒力のことなど考えることもなく、
安易に検査や治療をする医者は
どうしても好きにはなれないのです。

先程も言ったように、
検査や薬、手術が必要なことも多々ありますし、
その時には医者が力を発揮できるときです。

しかし現実には、
検査も治療も不必要な状況の方が
圧倒的に多いのです。

特に下痢や発熱などの急性疾患の場合は、
安静にして
自己治癒力を最大限に発揮できる状況を
作りさえすれば、
たいていの場合は勝手に治ってしまいます。

もちろん中には肺炎やがんといった
治療を必要とする病気もありますが、
患者さんの状態を見れば、
急を要する状態か否かはある程度判断できます。

数日前から症状が出現したというようなときには
先ずは自然治癒力に任せて数日待ち、
それでも一向に改善しないようなら、
そこで初めて検査をしても遅くはありません。

心療内科医の1年目のときは無給でしたので、
当然アルバイトに出る必要がありました。
その際、とある病院に週1回午前中に
内科外来のアルバイトを
していたことがあります。

風邪などの患者さんが多かったのですが、
そんな患者さんには
発熱は風邪を治すために必要なものだから
むやみに下げる必要ないし、
薬も必要ないと説明していました。

そうは言っても納得せず
薬が欲しいという患者さんは当然います。
そんな患者さんには、
PL顆粒という総合感冒剤を少なめに処方して
帰ってもらっていました。

これは後から聞いた話しですが、
そこの病院の院長は、
私がPL顆粒しか出さないと言って
ずいぶんと文句を言っていたようです。

1包10円もしないような薬しか
出さないような医者は
病院からすれば、
あまりよい医者だとは
言えなかったのかもしれません。

多分、患者さんからの苦情もあったでしょう。
「あの医者は、ろくに薬もくれない!」と。

当時は、まだ若かったので
自分の考えを患者さんに押しつけるような
ちょっと強引なところがあったのは確かです。

今は、患者さんの多くは
投薬や点滴をして欲しくて
病院に来ているのはわかっているので、
先ず必要最小限の薬を処方することを原則とし、
あとは患者さんの希望により
ある程度柔軟性を持って対応しています。

いずれにせよ、自然治癒力を軽視し、
むやみやたらと薬で治そうとする医者は
私はあまり好きではないということです。

しかし現実には多くの医者が
西洋医学の「枠」の中で物事を考え、
それに従って治療をしています。
当然のことながら、
治療手段の中心は薬であり、
自然治癒力は蚊帳の外に置かれます。

だから私はあまり
医者が好きになれないのです。