前回紹介した「芸能人格付けチェック!」の
6問の問題のうち、3問が味覚問題でしたが、
他の2問は聴覚問題でした。

ひとつは四重奏の問題で、
総額35億円以上する楽器と、
総額80万程度の初心者用の楽器を
プロが演奏し、どちらがよい楽器なのかを
聴き分ける問題でした。

もうひとつはオーケストラの問題で、
東京フィルハーモニー交響楽団と
アマチュアオーケストラの演奏を聴き、
どちらがプロの演奏なのかを
音だけで判断して当てるというものでした。

この問題も一見簡単そうですが、
実際に聴き比べてみると、
結構難しいものがありました。

どちらがよい楽器かとか、
よい演奏かとかたずねられても、
クラシック音楽をよく聴いている人ならば、
ある程度判断できるかもしれませんが、
素人からすると、違いはわかっても
どちらがどちらかと聞かれると、
味覚のときと同様、判断に困ります。

もしこれが
プロのオーケストラ同士の演奏であれば
より一層、どちらがよいのかという判断には
困ると思います。

私もクラシック音楽は好きなので
昔はよくレコードを聴いたり
コンサートに行ったりしていましたし、
月刊誌「レコード芸術」も
いつも買っていました。

そこには必ず音楽評論家の
新しく出たレコード(今はCD)の評論があり、
年末にはレコード・アカデミー賞も
発表されます。

このときいつも思っていたのですが、
有名な指揮者やオーケストラであれば、
CDを聴く前から、それなりの先入観をもって
聴くことになります。

当然、二流や無名の指揮者の場合は、
「多分イマイチだろうな」といった思いで
聴くことが多いのではないでしょうか。

「格付けチェック」の問題のように
純粋に音だけでそのよさを判断するのであれば、
本来は指揮者やオーケストラの名前を伏せた上で、
どれが一番よい演奏なのか決めるべきなのですが、
そういうことはどうもされないようです。

実は、名前や肩書きは、
評価に影響を与えてしまうことが
わかっています。

以前、学術論文の評価に関する研究論文が
発表されたことがありましたが、
これは結構衝撃的でした。

その内容は以下のようなものでした。
専門雑誌に投稿して却下された
二流大学の無名の研究者の論文を同じ内容のまま、
一流大学の有名な研究者の名前で応募すると、
通ってしまうとことが
かなりの数あることがわかったのです。

つまり、論文の内容よりも、
名前や肩書きで判断している部分が
結構あると言うことです。

そんなことがあるので、
最近は、有名な学術雑誌では、
どこの誰だかわからない形で
その論文を評価するように
しているところも出てきました。

また、国際音楽コンクールの場合も、
演奏の技術や表現力といった要因以外に
演奏者の見た目や美しさが
評価に影響を与えていると思われます。

国際コンクールで最後まで残る人は、
技術や表現力といった
音楽本来の評価項目では
甲乙つけがたい人たちばかりです。

それでも順位をつけるためには、
それ以外の要素、
つまり見た目の雰囲気や外見が、
審査員の心理状態に影響を与え、
それが点数の差に表れるということは
十分に考えられることです。

もちろん、審査員も男女によって
差があるのは当然ですし、
またこのような判断は
無意識レベルで行われるものなので、
本人は外見によって
点数に差をつけるようなことはないと
思っていると思います。

でも現実は外見によって
評価や判断は確実に変わってしまいます。
そのことは、犯罪者の刑期の長さの研究でも
明らかになっており、
例えば、同じ程度の犯罪を犯しても
イケメンの男性はそうではない男性よりも
平均して刑期が短くなることがわかっています。

このように人間の判断は、
客観的に判断しなくてはいけない
状況であったとしても、
どうしても自分の好みや外見といった、
主観的な要素が入り込んでしまうもので、
これを排除することはできないのです。

演奏にせよ、食事にせよ、
五感を使って人がその良し悪しを
判断するようなものは、
音や味といった本来的な部分だけではなく、
それに関わる人の雰囲気や肩書き、
先入観や思い込みといった要素も
大きく影響を与えているのです。

その事実を私たちは
しっかりと認識しておく必要があります。