学会での発表

先日、金沢で開催された
サイコオンコロジー学会に参加してきました。

サイコオンコロジーとは精神腫瘍学と訳され、
要は、がんと心に関連する、
ありとあらゆるものを研究する分野です。

今回私は
「がん患者に対する心理療法のエッセンス」
というシンポジウムの演者の一人として
「ブリーフセラピーの実際を見る」
という演題を発表させて頂きました。

いつもは普通に発表するのですが、
今回は初めての試みをしてみました。
それは、スライドを使った説明は一切せず、
いきなりデモンストレーションと解説を
同時進行で進めるのを見てもらうことで、
それを「発表」に換えさせてもらいました。

持ち時間は15分なので、
十分なことができないことも予想されましたが、
逆にたった15分でも
これだけのことができるということを
わかってもらえたらいいかなと
内心思っていました。

当日、会場から希望者を募っても
よかったのですが、
いきなり言っても
誰も手を挙げてくれないと思い、
今回は事前にクライエントになる人を
準備しておいてもらいました。

ただし、事前の打ち合わせはないので、
当日ぶっつけ本番での
デモンストレーションです。

クライエント(男性でした)は心理士の人で、
彼の悩みは臨床の仕事と研究を
バランスよくやりたいのに、
それがなかなかできないというものでした。

多少具体的な内容を確認した後、
最初に、話の方向性を決める質問をしました。

「どうなったらいいなって思いますか?」
という質問です。すると彼は、
「気持ちの切りかえができたらいい」と
言っていました。

仕事をして家に帰り、気持ちが切りかえられたら
研究の仕事に取り組めるので、
それがスムーズに行くようになったら
両者をうまくバランスよく
取り組めると思うとのことでした。

方向性が決まれば、
あとはそう難しくありません。
それができた体験について
たずねたらよいだけです。

「今までどんなときにうまく
気持ちのきりかえができたか」とたずねると、
「遊んだ日」の次の日とか
「仕事から帰りしばらくボーッと過ごしたあと」
とかは、気持ちが切りかわり
がんばれるとのことでした。

その後多少のやり取りをして
最後に今まで答えてくれたことをまとめて
終了しました。

これでちょうど15分です。
問題は比較的シンプルだったので、
さほど難しくはなかったのですが、
ブリーフセラピーの考え方を
知らない人がやると、
多分15分では、話を聞いただけで、
何をどうしてよいかわからないうちに
終わってしまうのではないでしょうか。

その意味では初めて
ブリーフセラピーの実際を見た人にとっては
きっと驚嘆と感動で
いっぱいになったと思いきや、
終了後の反応は「???」でした。

多分、「それがどうしたの?」
「ただ会話しているだけじゃないの?」
「そんなんだったら誰だってできるでしょ」
といった雰囲気がバシバシ伝わってきました。

学会発表では、ブリーフセラピーの
もっともらしい理論や考え方を話すよりも
デモンストレーションの方が
ずっとインパクトがあると思ったのですが、
当てが外れて、ちょっと残念でした。

でも、思い返してみれば私もそうでした。
ブリーフセラピーが何なのかを
全く知らなかったとき、
福岡の学会で初めてインスーという、
ブリーフセラピーの大家の女性が
舞台で約1時間の
ライブセッションを見せてくれました。

その時の私の印象は、
ただ普通に話を聴いたり、
質問したりしているだけで、
どーってことないなあ、という印象でした。

ところが、そのセッションを見た
専門家の感想は、インスーはさすが!
ごく普通の会話にしか見えないのに、
あれだけのことができるのは
さすがとしか言いようがない!
といった感想があちこちで聞かれました。

私は、そんなもんなのかなあと思いながらも、
それをきっかけに
ブリーフセラピーの勉強を始め、
以来すっかりとはまり込んでしまったという
経緯があります。

それを思うと、
全く知らない人からすれば、
たった15分のデモンストレーションを見ても、
以前の私が感じたように、
どーってことないなあ、
という印象を持たれるのも
無理からぬことかなとも思いました。

ブリーフセラピーのよさを伝えるというのは、
なかなか難しいものですね。
次回はもう少し工夫をして
発表に望みたいと思います。