ブログ:セラピストが話をするということ

カウンセリングでは傾聴や受容、共感
といったことが重要視され、
カウンセラーが話をしたり、
ましてやあれこれ説明をしたりすることは
あまり好ましいとは思われない傾向にあります。

心理療法の場合は、数多くの種類があるので
一概には言えませんが、
それでも、セラピストが話をすることよりも
クライエントの話を聴くことの方が
重要視されることが多いだろうことは
容易に察しがつきます。

しかし最近の研究では、
セラピストの話や説明を通して、
クライエントに期待感を持ってもらえたり、
健康的な行動や活動をしてもらえるならば、
それはQOL(生命・生活の質)の向上や
症状の軽減にとても重要な影響を
及ぼすということがわかってきました。

つまり、考え方や手法の異なる
様々なセラピーがありますが、
どのようなものであれ、
期待感や行動が促されるような
話や説明を伴うセラピーでは
それなりに有効性があるということです。

もちろんこの場合、
むやみやたらとセラピストが話をするのではなく、
どうしたらクライエントに
期待感を持ってもらったり
行動や活動を促したりするような話や説明が
できるのかがポイントになります。

私の場合は、クライエントの
「できていること」や「できそうなこと」を
うまく引きだすような質問をし、
それにより問題解決への期待感を
持ってもらうようにしています。

また、問題が改善するための
実現可能な小さな行動を引き出し、
それを実行してみようという気になるような話も
最後にします。

私が開催しているセミナーでは
毎回、デモンストレーションをするのですが、
その点をいつも心がけながらやっています。

つまり、質問を通して「できていること」や
「できそうなこと」を引きだしながら、
最終的には、そこで語られたことを
全てまとめて返すのですが、
その際、クライエントに
自信や希望、可能性、行動への意欲を
持ってもらえるような、
そんなまとめ方をして話を締めくくります。

この最後のまとめの話により、
クライエントの表情は一気に輝きます。
とても気持ちが楽になったと言う人もいれば、
なんかできそうな気になってきたと
言ってくれる人もいます。

逆に、最もやってはいけないまとめ方が
単にセラピストが、私はこう思うとか、
こんなことをしたらよいといったような、
自分の知識や経験に基づくアドバイスを
案に押しつけてしまうような形で
終わるというパターンです。

このような場合、クライエントは
「わかっちゃいるけどできない感」や
「しっくりこない感」を抱くことになり、
セラピストだけが自己満足感に
浸るという結果に終わることがほとんどです。

そうではなく、
コミュニケーションや質問を通して、
最後のまとめに使えそうな題材を集め、
それで、クライエントに
自信や希望を持ってもらえるような
「物語」を考える必要があります。

例えて言うならば、
クライエントからピカッと光る答を拾い集め、
それを上手に組み合わせることで、
最後に、キラキラ輝く宝石が散りばめられた王冠を
手渡すことができるというような、
そんなイメージです。

今までは「できること」や「できそうなこと」を
うまく引き出す「質問」の重要性ばかりを
強調してきましたが、
それをいかにうまくまとめて、
最後にクライエントに
プレゼントするかということも、
質問に勝るとも劣らず
重要なことなんだということを
改めて認識させられた今日この頃でした。

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