私は一般の方々を対象に
コミュニケーションのセミナーを開催していますが、
そのベースには
ブリーフセラピーの考え方があります。

ブリーフセラピーとは
心理療法のひとつであり、
その中にもいくつかの流派がありますが、
共通しているのは、
「今ここ」を大切にするということです。

それが意味するところは、
過去のことや
小さい頃にどんな経験をしたといった、
幼少時の体験などは
あまりこだわらないということです。

また将来の不安などについても、
所詮、先のことなので
どうなるかわからないというスタンスを取ります。

つまり、過去や未来にとらわれるのではなく
「今ここ」で「できること」を見つけ、
それをやっていけばよいという考え方なのです。

これは禅や森田療法、
今流行りのマインドフルネスと
共通する部分でもあります。

いろいろと悩みや問題を抱えている人は、
後悔の念に苛まれたり、
将来のことに不安を覚えたり、
できないようなことを
しなければいけないと思い、
いつまでも同じところをグルグル回っている、
そんな状態に陥っています。

これではいつまで経っても、
前に進みませんし、状況は改善されません。
ブリーフセラピーでは、
問題を抱えている人に対して
針の穴ほどの小さな風穴を開け、
それを突破口として、
状況を変え、問題を解決していこうと考えます。

つまり、できないことはできないので、
それはあっさりと捨て去ります。
例えば、仕事がうまくいかず、
クヨクヨ悩んでいる人に
「クヨクヨ悩んでも仕方ないから
もっと気楽に考えて前を向いて
進んで行こう!」
などと言っても、できるわけがありません。

そうではなく、
今の状況でも「できること」を見つけ、
それをしてもらえばよいのです。

今の例で言うと、
クヨクヨしながらも、ちょっと散歩をしたら
少し気分が楽になったとしましょう。
そうであれば、
その散歩が「できること」なのです。

クヨクヨすることを
無理にやめようとするのではなく、
クヨクヨしながらも「できること」を
少しずつでもやっていく方が、
解決の糸口を見つける可能性が
ずっと高くなるというわけです。

もしかしたら、散歩しながら
ふと、こんなことをしたら
うまくいくかもしれないという
アイデアが浮かんでくるかもしれないのです。

将来の不安についても同様です。
あれこれ考えても仕方ないとわかっていても
そうしてしまうのが人なのです。

ですから、あれこれ心配しながら、
「今、できること」を見つけて、
それをしていけばよいのです。

そう言うと中には、
将来の見通しや目標が立たなければ
何をしたらよいのかわからないので、
結局何もできないのではと
考える人がいるのですが、
それは違います。

見通しや目標は
「今、できること」をとりあえずやるからこそ、
状況が少しずつ変わり、
その結果として次第に見えてくるものなのです。

つまり、過去や未来にいくら思いを巡らしても
「今」が変わらないことには何も動きません。

だからこそ、「今」を大切にし、
「できること」をやっていき、
それによって生じた変化に応じて、
再び「できること」をしていく、
その繰り返しが、
過去のこだわりを緩め、
将来への不安を軽減させていくのです。

私が日常のコミュニケーションや
問題解決を考える際に使っている
ブリーフセラピーとは
このような考え方に基づいています。