よく体験セミナーではお話しをするのですが、
私たちは普通に日本語が話せてしまうため、
あえてコミュニケーションの勉強を
しようとする人はほとんどいません。

そのため、一般の人の悩みごとを聴いて
それに対して何かを言おうとする場合、
よかれと思って言ったことが、
かえって相手を
落ち込ませてしまったり、
傷つけてしまうようなことがよくあります。
しかも、そのことに本人が気づいていません。

典型的なパターンとしては、
後悔の念に苛まれている人に対して
「過ぎ去ったことは変えられないのだから、
いつまでもクヨクヨしていても仕方ない。
もっと、前を向いて歩いて行こう!」
といった類のものです。

また、人間関係で
うまくいっていないという悩みを聴いて、
「過去と相手を変えることはできないんだから、
先ずは、自分が変わるしかないんじゃない」
「その人にだっていいところがあるはずだから、
そこをもっと見るようにしたらどう」
「どんな状況であったとしても、
感謝の気持ちを持つことが大切だと思うの」
といったような言葉です。

本人からすれば、これらの発言は、
相手を元気づけたり、
問題解決のための有益なアドバイスをしたと
思っているのでしょうが、
これらの言葉が、
相手をどんなに失望させてしまっているかが
あまりよくわかっていません。

ではなぜ、このような言葉は
かえって相手を落ち込ませてしまうのでしょうか。
それは、実行不可能なことを
アドバイスしているからです。

人は誰でも、
いつまでもクヨクヨしていてはいけないとか、
感謝の思いが大切だとか、
人のよいところを見るようにしようとか、
そのようなことは頭ではわかっているのです。
でもそれが実際にはできないのが人間であり、
だからこそ悩んだり喧嘩をしたりするのです。

にもかかわらず、
あたかも「これで悩みは解消する!」と
言わんばかりに語る言葉は、
ただ単に、実行不可能な理想論を
並べ立てているだけだということに
気づいていないのです。

クライエントにしても、
できないことを言われても、
何の役にも立たないとわかりながらも、
まさしく正論であるため反論ができません。

そのため、しっくりこず、
また何も言えないことへの
もどかしさを感じつつ、
「全然自分のことをわかってくれない」と、
失望感を覚えざるをえないというわけです。

本来であれば、クライエントの
今の苦しみを受けとめてあげるだけで
十分なのですが、
そこについ、余計なことを言いたくなってしまうのが、
初心者なのです。

もちろん、辛さを受けとめるだけでは
どうにもならないこともしばしばですが、
そのときは、悩みや問題を解決するための
その人に合った方法を
見つけていくための話をする必要があります。

しかし、そのような話をする前に、
先ずは、クライエントの思いを受けとめ、
「わかってもらえた」と思ってもらえるような
関わりをすることが先決です。

理想論やきれい事、
誰もが正しいと思うことは、
正解を言っているかも知れませんが、
どうしたらそれができるのかという
具体的な方法論に関しては
一切述べられていません。

クライエントはその具体的な方法が知りたいのに、
それには全く触れず、
ただ正解を言うだけのアドバイスでは、
悩みを相談に来た人にとっては、
全く役立たないどころか、
有害だとすら言えます。

初心者は、安易にきれい事を並べがちですが、
たいていの場合、
それは実行不可能な理想論です。

そのため、それらの言葉は、
クライエントをかえって失望させる
ことになるということを
是非、心に留めておいて
もらいたいと思います。