私が徳洲会での3年間の研修を終え、
心療内科医になったのが平成2年でした。

心療内科に入局した頃は、当然のことながら、
心療内科の知識はほとんどなく、
心と体はつながっているということは
頭では理解していましたが、
実感としては今ひとつなところがありました。

その一方で代替(だいたい)療法による
治療にも興味があり、
整体や鍼灸、アロマセラピー、レイキなど
様々なセラピストや治療家の方々と
つながりを持っていました。

そうは言っても、
私自身が代替療法をするわけではなく、
心療内科ではもっぱら
心理療法による治療を行っていました。

心療内科医として、薬を使うのではなく
コミュニケーションや心理療法によって
患者さんの身体症状を
治療するという経験を積むにつれ、
次第に、患者さんの「心の治癒力」が持っている
症状を改善させる力のすごさを
ひしひしと感じるようになりました。

そんなある時、私の頭にある疑問が
涌いてきました。
私のやっているコミュニケーションによる治療と、
治療家の代替療法による治療とは
何が違うのだろうかという思いでした。

例えば、患者さんの
痛みに対するアプローチを見てみると
整体や鍼灸の場合、
手技療法により体のバランスを整えたり、
気の巡りをよくしたりすることで、
体に備わっている自然治癒力を高め、
痛みを治すといった説明がされています。

その一方で、私がやっている
心理療法によるアプローチでは
コミュニケーションにより
患者さんの症状などに対する「思い込み」を緩め、
また、こんなことをしたら症状が軽減したという
「成功体験」を積み重ねてもらうことで
安心感や期待感、自信という
「心の治癒力」をうまく引きだし、
痛みを治すということをしていました。

つまり、心と体はつながっているので、
患者さんに安心感や期待感を持ってもらえるような
コミュニケーションさえ取れれば、
自ずと身体症状も軽減するという
考え方に基づいて治療をしていたわけです。

また、プラシーボ(乳糖など)を飲んでも、
その期待感や信頼感だけで
痛みが軽減されることからもわかるように
「心の治癒力」にはかなりの症状を改善する力が
あるということが知られています。

そう考えると、代替療法で痛みが改善するのは
つまるところ、
代替療法そのものによる効果と言うよりも、
治療家と患者さんとの信頼関係や
治療に対する患者さんの期待感といった
「心の治癒力」によるところの方が
大きいのではないかと考えるようになりました。

私がやっていることも治療家がやっていることも、
先ずは、かかわりにより、
患者さんから信頼感や安心感、期待感という
「心の治癒力」を引き出し、
その上で、私は心理療法という技法を使って、
治療家は代替療法という技法を使って、
「体の治癒力」(自然治癒力)を高め、
活性化することで痛みなどの身体症状を
改善させているのだと
理解するようになったのです。

この際、重要なのは技法ではなく、
そのベースとなる
患者さんとのつながりや信頼関係、
患者さんの安心感や信頼感、納得感、希望です。
そのような思いが引き出せる関わりができれば、
実は手技は何でもよいということになります。

だからこそ私のようにコミュニケーションを
使ったかかわりでも
整体やアロマセラピーといった
タッチを用いた方法でも、
さらにはサプリメントという「道具」を使って、
患者さんにアプローチするやり方でも
方法論は多種多様ですが、
結果として患者さんの「心の治癒力」が
うまく引き出せれば、自然治癒力も活性化され
痛みなどの身体症状も
取ることができるということなのです。

そのことに気づいてからは、
私の中のモヤモヤや疑問は
すっかりなくなりました。
私のこの考え方、皆さんはどう思いますか。