西洋医学バリバリの医者が
ひょんなきっかけから代替(だいたい)療法や
スピリチュアルな世界に目覚め、
今度はいきなり西洋医学の限界や有害性、
さらには代替療法やスピリチュアルな視点の
必要性や有用性を
声高らかに主張し始める人がいます。

私も代替療法やスピリチュアな世界を
肯定的に捉えている人間の一人として、
そのような医者を
無下に否定するつもりはありませんが、
でも正直言って、全面的には賛同できません。

人は誰でも、新しいことに目覚めると、
これが真実だ!これしかない!と思ってしまい、
その勢いで、行くところまで
行ってしまうということがしばしばあります。

代替療法家やスピリチュアル系の人たちからすれば
自分らのことを理解してくれる医者が
いきなり現れたのですから、
それは大歓迎でしょうし、
当然その医者は重宝され、
関連団体からの講演依頼も殺到します。

そしていつの間にか、
アンチ西洋医学の人や
代替療法を信じ切っている人にとっては
まさに救世主のような存在になってしまうのです。

医者は医者で、だんだんとその気になり、
振り子の振れ幅も最大限に達します。
目覚めてから最大振幅に辿り着くまで
数年~10年くらいではないでしょうか。

行き着くところまで行くと、
今度は、昔は一生懸命に取り組んでいた
西洋医学の必要性を再認識し始める時期が来ます。
代替療法やスピリチュアルな考え方も大切ですが、
それは決して西洋医学を
全面否定するものではないという思いが
息を吹き返してくるわけです。

西洋医学のよい点も悪い点も
十分に知り尽くした上で、
代替療法の世界に身を投じ、
その世界の有用性と問題点を
身を持って知ったとき、
初めて、バランスのとれた視点から
医療を見ることができるようになるのです。

つまりそのような視点を持って初めて、
目の前の患者さんのニーズに応えつつ、
どのようなアプローチが
その人に取って最善のものになり得るのかを
治療法のみならず、価値観や置かれた環境など
トータルな視点から考えることが
できるようになるということです。

これこそが、本当の意味での
バランス感覚のある
ホリスティックな視点を持った
医者だと思っています。

そのような医者になるためには、
40代までに両極端の世界を
十分に経験しておく必要が
あるのではないかと思っています。
そうであれば、最も充実した時期を
バランス感覚のよい医者として
過ごすことができるのではないかと思うからです。

私の場合は、パターンがちょっと違いました。
高校時代から、すでに西洋医学の問題点や
スピリチュアルな視点の必要性を感じており、
色々と本を読んだりしていました。

大学時代も医学生でありながら、
西洋医学に対して批判的で、
いつも斜に構えているところがあり、
何人かの教授からは、
“君みたいな人にはもう教えたくない”とまで
言われてしまいました。

しかし西洋医学を学び、
実際に患者さんと関わるようになるにつれ
少しずつその必要性や重要性を
感じるようになってきました。

卒業後は、
まずは西洋医学の経験を十分に積もうと思い、
当時最も研修がハードだった徳洲会病院を選び、
そこで研修医として3年間を過ごしました。
身体医学としての西洋医学に
どっぷりつかっていたのがこの時期です。

また、ホリスティック医学協会に出くわし、
会員になったのもこの時期ですので、
西洋医学の経験を積むと同時に
代替療法に対する知識を蓄え、
数多くのスピリチュアルな視点に
触れた時期でもありました。

ですから私の場合は30代後半の頃には、
すでに両者の視点を持っていましたし、
おまけに心療内科を専門に選んだおかげで、
心と体のつながりをはじめとする、
様々な「つながり」という視点も加わり、
より一層、視野が広がった気がします。

振り返って見ると私の場合は、
先ず代替医療やスピリチュアルな世界から入り、
その後に西洋医学を学びつつ、
代替医療の世界も同時に学んでいったという、
少々、例外的なパターンの人間だったかもしれません。

それはそうと、
要するに、医療や治療を考える上において、
西洋医学の視点と代替療法の視点、
そしてスピリチュアルな視点、
さらには、その根底に
通奏低音のように流れている心と体のつながり、
人と環境のつながりといった「つながり」の視点、
そのような様々な視点を
バランスよく持っていることが
医者としてはとても大切なのではないかと
思っているということです。