ポジティブ心理学の本を読んでいると、
とても勉強になることも多いのですが、
その一方で、こんなことできるわけないなあ、
と思ってしまうことにも出くわします。

例えばイローナ・ボニウェル著の
「ポジティブ心理学が1冊でわかる本」などは、
ポジティブ心理学の研究成果を
コンパクトにまとめてくれているので、
ポジティブ心理学の全体像を把握するのには
とても良い本だと思います。

ただ、どうしても学問的な側面が強く、
実践や臨床にどう落とし込んで
いくかということになると、
まだまだ発展途上の感を否めません。

この本は330ページもあるのですが、
具体的な実践方法となると、
たった一章だけ、
それも23ページしか割かれていません。
全体の10分の1にも遠く及ばない状態です。

その中身も実証済みの
有効な方法が紹介されいるのですが、
私からすると???と思ってしまうものも
少なくありませんでした。

例えば「感謝の訪問」です。
これは幸福感を今すぐにでも上げる
とても有効な方法として紹介されいるのですが、
私にはとてもできそうにありません。

これは過去に思いを巡らし、
感謝の気持ちがわいてくるような人を思いだし、
「感謝の手紙」を書きます。
書き終えたら、その人に連絡をとり、
可能であればその人に直接会って、
相手の目の前で手紙を読み上げるというものです。

こういうことができる人もいるでしょうが、
そんなことができる人は
とっくに幸せになっていると思います。

幸福感が持てないような人は、
こんな勇気のいる行動は
ハードルが高すぎて取れませんし、
第一、感謝の念を認識できるような人を
本当に思い出せるのか、
たとえ思い出したとしても、その思いを
しみじみと噛みしめることができるのか?
私はそんなことを考えてしまうのです。

また夫婦関係を良くするための方法として
「積極的・建設的反応」という方法が
紹介されていました。
これは、例えばパートナーが
「よい知らせ」を持ってきたとき、
単に「よかったね」とか「そうんなんだ」とかで
すましてしまうのではなく、
積極的、建設的に反応をするというものです。

例えば昇進したといった話をもって来た場合、
その話をよく聴き、質問し、興味を持ち、
大いに喜び、場合によってはお祝いをすることも
大切だと言うのです。

仲のいい夫婦は、当然のごとくしているでしょう。
しかし関係性のよくない夫婦に
いきなりこうしなさいと言われても
なかなか素直にできるわけがありません。

「仕事や昇進もいいけど、
たまには子供のことも考えて!」
といった小言の一つや二つ言いたくなるのが
一般の夫婦ではないでしょうか。

有効な方法だとわかっていても
言うは易く行うは難しです。
もっともそのことは十分に認識されているようで
クリストファー・ピーターソン著の
「幸福だけが人生か?」(春秋社)には
そのライト版のことが書かれていました。

「積極的・建設的反応ライト版」とは
誰かがよい知らせを報告してきたときには、
「でも」という言葉を使わずに反応する、
というものです。

これだけだったら、
まだでできそうな気もしますが、
これだと積極的でも建設的でもない気がします。
「よかったね」「そうなんだ」でも
OKというわけですから。
なんか、このあたりはよくわかりません。

このようにポジティブ心理学では
こんなことができたら
幸福感が高まりますといった研究がたくさんあり、
だから皆さん、そうしましょう、
といった流れのものが多いのです。

個人ワーク的なものであれば
ある程度取り組めるかもしれませんが、
相手がいる場合は、そう簡単ではありません。
感謝の気持ちを形にするとか、
相手に対して思いりを持つとか、
そんなことができれば、
誰だってハッピーになれることくらい、
研究結果を知らなくても体験的にわかります。

でも、頭ではわかっていても
実行できないから皆困っているのであり、
どうしたらそれができるようになるのかが
一番の問題なのです。

この点をもう少し深く掘り下げ、
みんなが実行可能な方法を
教えてくれるまでに研究が進めば
ポジティブ心理学も
もっと評価されるように
なるのではないかと思うのですが、
今の段階では、なかなか難しそうだなというのが
本を読んだあとの正直な感想です。

皆さんはどう思いますか。