久しぶりに楽しい(?)患者さんが来ました。
彼女は、もともとひどい心配性であり、
常に自分に悪いことが起こるのではと
心配するクセがあります。

それは小さい頃からだと言うので
すでに30年以上、
心配し続けていることになります。

でもその間、結婚し、子どもも生まれ、
一見幸せそうにも見えるのですが、
それがすべて心配の種になるのです。

例えば、ちょっと動悸がしただけで
自分は病気ではないだろうか、
がんではないだろうか、
死ぬのではないだろうか心配します。

不眠や腹痛、めまい、等々、
様々な症状がしばしば現れるのですが、
するとついネットで調べてしまうのだそうです。

当然、ネット上は怖い情報が
溢れかえっているため
さらに不安や恐怖を募らせるという
悪循環に陥るということを
ずっと繰り返しています。

つい笑ってしまったのは
彼女は毎年検診に行くのですが、
その一カ月前からは必ず
いつ死んでもいいように、
身の回りのものを整理し始めるのが
常だというのです。

検診で末期がんだと言われ、
すぐさま入院になって
そのまま死んだとしても大丈夫なようにという
思いからだそうですが、
申し訳ないですが楽しいです。

また彼女の場合、
平和な時間もまた不安を呼び起こすのです。
しばらく何事もなく普通の生活を送っていると、
自分が穏やかな生活など
送れるわけないと思っているので、
こんなに落ち着いた日々が続くということは、
きっと近い将来、
悪いことが起こるに違いないと思い、
するとそこからまた
不安な日々が始まるというのです。

問題がある時は当然あれこれ心配しますが、
平和すぎるとまた不安になるという、
何とも愛すべきキャラクターなのです。

そんな彼女が、最近運動を始めたというのです。
今までは、どういうわけか
運動をすると死ぬと思っていたようで、
いっさい運動はしていなかったようですが、
イライラしているときとかにちょっと運動すると
気持ちが楽になり調子もよくなったというのです。

そんなこともあり、今は週に3回程度
ジムに行って運動するようになったそうです。

私はすかさず次のようなことを言いました。
「運動をすると不安やイライラを
あまり感じなくなるし、
あなたの一番心配するがんの予防にもなるので、
ぜひ運動は続けて下さい」

これは真実です。
運動は、脳の神経細胞を修復したり
新たに神経回路がつながれることにより
記憶力や集中力も向上してきます。
また、うつ病に治療にもなることが
様々な研究からもわかっています。

彼女は、私の話を興味深そうに聞き
そうなのかと頷きながら笑顔になり、
うれしそうに帰って行ってくれました。

その後ろ姿を見ながら私は密かに祈りました。
どうか、気分や体調がよくなってしまったら、
また悪いことが起こるのではないかと
心配し始めないように、と。