啐啄(そったく)の機という言葉を
ご存じでしょうか。
大辞林を見ると、
雛(ひな)がかえろうとするとき、
雛が内からつつくのを「啐」、
母鳥が外からつつくのを「啄」
と書かれています。

もともとは師匠と弟子との関係を表す
「禅語」だそうですが、
要は、タイミングが大切と言うことです。

相手がまさに殻を破ろうとする
その瞬間を見逃さずに
こちらがすかさず手をさしのべれば、
固い殻をも破ることができ、
その人は新たな世界へと
羽ばたくことができるというわけです。

これは人の悩みや問題を解決するための
コミュニケーションにも当てはまります。

本人が問題を解決しようとする思いが
あまりないときに、
いくらこちらが手をさしのべ、
アドバイスをしたとしても
問題が解決されるということはありません。

一方、相手があと一歩と
いうところまで来ているのに、
こちらが何もしなければ、
せっかくの問題解決のチャンスを
見逃してしまうことにもなりかねません。

クライエントは、問題を抱え、
どうしたらよいのだろうかと
悩み苦しんでいるとき、
同じところをグルグル回っているだけで、
なかなかそこから
出てくることができないという状態に陥ります。

そんなときに、
気づきを促すような質問をすることが
まさに「心の治癒力」を引きだすスイッチを
押すことであり、
クライエントが問題解決の糸口に
気づく瞬間なのです。

クライエントとセラピストの
信頼関係のもとで交わされる
コミュニケーションにおいては、
そのような、状況を一変せる
思いもよらないやりとりの瞬間があるものです。
それがまさに啐啄の機なのです。

そんな瞬間を読み取り、
相手がうまく殻が破れるよに、
適切なタイミングで手がさしのべられるような、
そんなセラピストでありたいと
私は常々思っています。