前回は、意志力のことを書きました。
今回はその続きです。

意志力は筋肉と同様、
鍛えることによって強くなるし、
使いすぎると消耗することは
前に述べたとおりです。

その事実を如実に示す面白い研究があるので
簡単に紹介したいと思います。

それはイスラエルの刑務所で行われた、
仮釈放の可否を判事が判断する場合の
共通パターンを調べるという研究です。

当然、判事は仮釈放決定の判断を公平に行い、
受刑者の民族的背景や犯罪の種類、刑期などで
判断してはいけないという認識はあります。

しかし実際には、仮釈放決定の判断には
かなり偏ったパターンがあることが分かっています。
それは民族的背景といった
受刑者の特性にかかわるものではなく
まさに判事の人間としての特性が
大きく関与しているのです。

どのような結果が出たかというと
午前中に審議を受けた受刑者が
仮釈放を認められる確率は70%であるのに対し、
午後の遅い時間に審議された場合は
10%未満しか仮釈放が認められなかったのです。

また昼食直前の審議で仮釈放が認められる確率は
15%であるのに対して、
昼食直後にはそれが60%に跳ね上がります。

これは一体どういうことなのでしょうか。
仮釈放の判定は精神的な負担が大きい仕事です。
もしも仮釈放を認めれば受刑者とその家族は喜び、
税金の節約にもなります。

一方で、仮釈放中の受刑者が
別の犯罪を起こしたならば、
判事は世間から批判を浴びることになり、
評判にも傷がつくことになります。
そのため、仮釈放の判断には
かなりのエネルギーを使うことになります。

審議は受刑者の主張を聞き、
犯罪学者や社会学者から助言を得て、
最終的に仮釈放が適切か否かという
難し判断を判事が下すことになるのですが、
その際、意志力は大いに使われ消耗するのです。

そうなると仮釈放の判断の決定が
できなくなってしまうのです。
その結果、自ずとリスクが少ない選択に傾き、
受刑者をそのまま刑務所に入れておくという、
現状維持のままという判断をしてしまうことが
多くなってしまうというわけです。

だからこそ、午後の遅い時間や昼食直前といった、
意思力がかなり消耗された状態で行われる判断は
仮釈放の確率を極端に下げてしまうのです。

受刑者から見れば
判事の昼食前に審議を受けたからと言って、
なぜ刑務所にいる時間が増えるのか、
全く納得がいかないだろうし、
ひどく不公平を感じるかもしれませんが、
これが現実なのです。

そこには判事だろうが一般の人だろうが
人間であれば誰もが持っている脳の特性なのです。
これがまさに「決定疲れ」という現象に伴う
意志力の消耗の結果なのです。

人は意志力を使えば使うほど判断力は鈍り、
適切な対応ができなくなるのです。

だからこそ、着ていく服の選択や
昼食は何にしようかといった、
普段何気なく使っている意志力を
あまり無駄遣いしないようにして、
いざ意志力を発揮する必要があるというときに
十分に発揮できるように
普段がから心がける必要があるのです。