私たちは何か問題が起こり、
それを解決しようとするとき、
まず原因を見つけ出し、
それを取り除けば問題は解決すると考えます。

この考え方は機械論や因果論に基づいたものであり、
科学や医学をはじめ、教育、経営、経済、産業等々、
ありとあらゆる分野で、
問題解決を考える際の基本になっています。

この考え方は、もの(物質)が対象のときには
その威力を遺憾なく発揮するのですが、
悩みのような心の問題が関与する場合には
無力であることがしばしばです。

例えばパソコンが動かなくなったとしましょう。
そこには必ず原因があります。
専門家が見れば
その原因を突きつめることはできるでしょうし、
故障の原因となる部品を交換すれば
また元に戻り、問題は解決します。

同様のことを、
人間関係や自分の心の問題に対してやろうとすると、
たいていの場合はうまくいきません。

例えば自分に自信がないと悩んでいる人が
いたとしましょう。
その原因は何かと探っていくと、
小さい頃、母親から
「なんでお姉ちゃんはあんなにできるのに‥」と
いつも姉と比較され、お前はダメだと
言われ続けてきたことに辿り着くかも知れません。

また、小学校のときにいじめられていたことや
中学受験で失敗したこと、
社会人になってからも仕事で失敗したことや
上司に仕事ができないやつだと
レッテルを貼られたこと等々、
自信が持てなくなった原因や要因は
いくらでも出てきます。

そもそも心の問題の場合、
原因なんてひとつに特定できませんし、
百歩譲って特定できたとしても、
過去の体験を変えることなどできません。

つまり機械の修理のように、
壊れた部品を交換すれば
それで問題は解決というわけにはいかないのです。

また自信が持てない原因を、
ネガティブなものの見方や考え方だと考え、
「自分は自信がない」という思いを
「自分は大丈夫、自信もある」という思いに
変えたらよいと思う人もいるかもしれません。

確かにそれができれば問題は解決します。
しかし肝心なのはどうしたら
自分に自信が持てるようになるかということです。

つまり考え方を変えたらいいと言われても、
その方法がわからなければ、
問題は全く解決しないのです。

「あなたなら大丈夫です、自信を持って」と、
言ってあげたら自信が持てるようになるなら、
こんな楽なことはありません。
もちろん、そんなことを言ったところで、
何も変わらないことは火を見るよりも明らかです。

機械のように、故障の原因となっているものを
交換したり修理できたりするのであれば、
問題は簡単に解決しますが、
心は機械でも物でもありません。
「自信のない心」を、部品を交換するように
「自信のある心」に変えることなど
できないのです。

人間関係の問題も同様です。
相手ともめる原因が、
自分の優しさの欠如や
すぐにイライラする性格にあることが
わかったとしても、
それをすぐささ
優しい心や穏やかな性格に変えることなど
できないのです。

つまり人の心に起因する悩みや問題は、
機械論的な考え方では
解決できないということです。

この点をはっきり認識していないと、
クライエントの悩みを聴きながら、
出口のない原因探しを
いつまでも続けることになってしまうのです。

カウンセリングや悩み相談がうまくいかないのは、
いつまでも原因探しにこだわっているからです。
もうそろそろ、
人の心は機械ではないということに、
気づいてもいいのではないでしょうか。