私たちは物事を楽観的に考える傾向があります。
例えば、事故にあったり、
大きな病気になったりする確率は
誰にでもそれなりにありますが、
しかし普段そのようなことを
私たちが意識することはほとんどありません。

また、日本では三組にひと組は
離婚するという現実がありますが、
新婚のカップルに、
将来離婚する可能性をたずねると
ほとんどの人がゼロだと言います。

さらに、100人に対して、
あなたの運転技術は平均より上だと思いますか、
それとも下だと思いますかとたずねると、
本来ならどちらも50%前後になるはずですが、
実際には70%の人が、
自分は平均よりも上だと答えます。

能力や優しさに関してたずねても
同様の結果が出てきます。
つまり、たいていの人は自分のことを
平均以上の人間だと思っているのです。

このように人は
自分の都合のよいように考える傾向があり、
これを楽観主義バイアスと言います。

もちろん現実はそんなに甘いものではありません。
離婚するなんてあり得ないと
思っていた夫婦だって離婚しますし、
自分なら成功すると思って立ち上げたお店も
数年もしないうちにつぶれることも
しばしばです。

これがまさに楽観主義バイアスによる思いと
現実との違いなのです。
楽観主義はあくまでも「思い込み」であり、
現実そのものではないのです。

そうであるならば、楽観主義でいることは
あまりよいことではなのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
今言ったことと
矛盾するように聞こえるかもしれませんが、
楽観主義の人は、
仕事や結婚がうまくいく可能性が高くなり、
また、幸福感も高まり、
成功したり健康になったりする可能性も
高くなることが知られています。
これらは楽観主義の大きなメリットなのです。

ではなぜ、楽観主義の人は
うまくいく可能性が高くなる一方で、
現実の厳しさを思い知らされ、
自分の甘さを後悔する羽目になる人も
いるのでしょうか。

それは、楽観主義の人は
現実のリスクを過小評価する傾向にあるからです。
楽観主義はうまく機能すれば
幸せな気持ちになれるし、
物事がうまくいく可能性も高くなりますが、
その一方で、無防備で非現実的な楽観主義は、
失敗や破綻を招きかねないということです。

つまり、楽観主義バイアスは基本的に
人をハッピーにしてくれる思考のクセですが、
それを現実のものにするためには、
リスクを回避するための備えも
怠らないという姿勢が重要だということです。

自分の店を持つという夢があるからと言って、
今まで働いていた会社を突然辞め、
店をオープンさせたとしても
楽観主義の効用が働くのはここまでです。

その後すぐに楽観主義だけでは
乗り越えられないことがわかり、
たいていの人は大きな借金を残して
閉店せざるを得ないという現実を
目の当たりにすることになります。

そうではなく、
経済的に困窮するというリスクも考え、
すぐに仕事を辞めてしまうのではなく、
まずは仕事を続けながら、
将来の夢に備えるとか、
経営に必要なノウハウを事前に学ぶといった準備も
怠らないという姿勢こそが大切だということです。

そのようなリスクに対する備えをしていれば、
あとは楽観主義バイアスの流れに乗って、
期待感と幸福感に満ちた人生を送ればよいのです。

なお、楽観主義バイアスについては
ターリ・シャーロットがTEDで
とてもわかりやすく話していますので、
興味のある方はこちらをご覧下さい。