先日、中華料理店で医師会の集まりがあり、
久しぶりに開業医の先生等と一緒に
お酒を飲みました。
みんな生ビールを飲みながら
楽しくおしゃべりをしていました。

そんな最中、
隣のテーブルから
大きなワインボトルが回ってきました。
どうも一人の先生が持ち込み、
それをみんなで少しずつ分け、
最後に私のテーブルに
回ってきたものだったようです。
(このお店は有料でお酒の持ち込みも可でした)

みんなビールを飲んでいる最中でしたが、
ワインが回ってきたので、
それを各々がグラスに注ぎ、
一杯ずつ飲ませていただきました。
誰もが頷きながら、
「おいしい」と言っていましたが、
社交辞令以外の何ものでもないことは明らかでした。

私も一杯飲みましたが、
なんてことはない普通のワインだったので、
それを飲み干すと、またビールを飲み始めました。
まだ少しボトルの中にはワインが残っていましたが、
それには誰も手をつけず、
皆さん自分のビールを飲んでいました。

寂しそうにテーブルの上に残されたワインボトルに
再び注目が集まったのは
隣のテーブルに座っていた先生が、
そのボトルに手を伸ばしたときでした。
その先生は、そのボトルを持ちながら、
「このワインは6万円するそうですよ」と言うと、
テーブルにいた人たちの目の色が急に変わりました。

慌てて自分のグラスに少しだけ残っていたワインを
味わうように飲み干す人もいれば、
「やっぱり高いだけのことはあって
味がまろやかだなあ」とか、
「オレももう一杯もらおうかな」とか言う人もいました。

先程まで誰も興味を示さなかったのに、
6万と聞いた途端、みんなが一斉に飲み始め、
ボトルはあっと言う間に空っぽになってしまいました。

この光景を見てつくづく思いました。
ワインにせよ、料理にせよ、
人は味そのものがおいしいと思っているのではなく、
値段が高いとか高級とかいうイメージで
おいしいと思っているのだと。

値段を聞いた瞬間、
まさにワインの味が変わるのです!
それまではごく普通の味だったのが、
急に高級感のある味わいになるのです!
人間の脳って不思議ですね。
高級品だと意識するだけでおいしくなるのですから。

そう考えると「おいしさ」って
何だろうと思ってしまいます。
少なくとも、
それそのもの味や香りだけではないのは確かです。
その人のイメージや思い入れ、
さらには思い込みも大きな影響を与えます。
もちろん、誰とどんな雰囲気で
食べるのかによっても大きく異なります。

「おいしさ」とは何か。
そんなことをあらためて考えさせられた、
そんな出来事でした。